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そこに、人間が登山するのは神を冒涜するのに等しい行為なのであった。 そんな折、地元のアボリジニの長老が死去した。遺族は政府に対して、エアーズロックの登山を自粛するよう要請したのである。アボリジニに配慮した白人側は、20日間前後の人山禁止を決めたものの、その後はこれまで通り再開する方針を決定した。 白人側にとってみると、当然の決定であろう。入山禁止が長びけば、観光客の減少を意味する。一刻も早く人山を解禁したい。一方のアボリジニにとっては、聖地の山に、白人がロッククライミングなどで登っていくことは耐え難いことに変わりはない。両者の間には深い溝が横だわっていることを象徴する事件だといえるだろう。 今後、アボリジニを虐げてきた負の遺産をもつオーストラリアの白人社会が、アボリジニの習慣・文化とどう折り合いをつけていくのか、エアーズロックの一件はその難しさを教えてくれたのである。トルコ耶ギリシャの歴史的な争い 共通項をもたない隣人同士 トルコとギリシャは何世紀にもわたって敵対関係にあり、双方に共通しているのは憎しみだけだといわれてきた。 はじめに位置関係を整理しておくと、このふたつの国は隣同士である。トルコは小アジア半島に国土の97パーセントがあるが、あとの3パーセントはボスポラス海峡の向こう側、つまりはヨーロッパ側にある。ボスポラス海峡は黒海への入り口であり、逆の側から見れば、黒海からマルマラ海、エーゲ海、そして地中海へと至るための要衝だ。最大の都市イスタンブールは海峡の両側にまたかっている。 一方のギリシャはバルカン半島の南端部にあり、トルコのヨーロッパ側の領土と国境を接している。つまり、トルコとギリシャ本土はエーゲ海を挟んで向き合い、陸続きの関係にもある。 ヨーロッパに属するギリシャと、中東または西アジアと区分され、東と西の文明の十字路といわれるトルコ。いうまでもなくキリスト教とイスラム教という宗教的な違いもある。隣同士といっても、それぞれ民族的に大きく異なり、地理的距離以外に近いところはほとんどない。 現在の国境線が引かれたのは、オスマンートルコが崩壊した後のことで、それまでギリシャは長い間オスマンートルコの支配下に置かれていた。1829年にギリシャが独立してからも、繰り返し戦火を交えているし、支配する側とされる側にあったことは両国民の胸に深く刻み込まれている。 さらに歴史をさかのぼれば、ギリシャ系の人々が小アジア半島で暮らしていた時期もある。一帯の勢力地図は、時代とともに移り変わってきた。 現在のトルコ共和国はさほど大きな国ではないが、今に至るまでの間にトルコ系の人々が広範な地域で目覚ましい活動を遂げてきたことを忘れてはならない。それはトルコ系民族がシベリアから中央アジア、西アジア、東南アジア、インド北部、ヨーロッパ、北アフリカにまでまたがる地域で暮らしていることからも明らかである。 トルコ共和国以外で特に多く集まっているのは、旧ソ連から独立したカザフスタン、ウズペキスタン、トルクメニスタン、キルギス、アゼルバイジャンといった国々や中国の新疆ウイグル自治区だ。中央アジア一帯はトルキスタンと呼ばれるが、これは「トルコ族の土地」を意味する。 ただし、ほかの民族と混血するなどしてきたため、同じトルコ系といってもトルコ共和国とトルキスタンではかなりの違いがある。共通点といえば、テュルク語を話し、イスラム教を信仰しているということで、トルコ共和国で使われているトルコ語はテュルク語の一種だ。 トルコ系の人々の源をたどると、紀元前3世紀頃にバイカル湖の南に現れたテュルクという民族に行き着く。そのなかから中央アジア周辺に移った人々が6世紀の半ばにトルコ系初の突厭(チュルク)という国家を築き、独自の文字を生み出している。 この突厭はまもなく東西に分裂し、衰退した。8世紀半ばにはトルコ系の一部が建国したウイグルが再興した突風を倒し、モンゴル高原までを支配下におさめる。唐にも侵入して戦うなど一時は繁栄したが、9世紀にキルギス族の侵略を受けて崩壊し、ウイグルの人々は西や南に移動していった。 ウイグルはマニ教を国教とする遊牧帝国だったが、移住した人々は中央アジアで暮らしていたアーリア人と混血し、イスラム教を信仰するようになり、10世紀にはカラーバーン朝を興した。これがトルコ系初のイスラム王朝である。 そして、111世紀になると、中央アジアから南へ下っていったトルコ系の人々が、現在のイラン北部でセルジュク朝を興す。このセルジュクートルコはさらに西へと勢力をのばし、現在のイラクや小アジア半島まで領土を広げていき、12世紀半ばに滅亡するまでに小アジアに数多くのトルコ系の人々が移り住むようになっていった。 オスマンートルコの支配下に置かれたギリシャ 一方、現在のギリシャにあたる地域で、より古い時代から文明が栄えていたことは、よく知られている。ギリシャ系の人々は早くから小アジア半島にも歩を進めていた。 紀元前1900年頃には、バルカン半島にギリシャ系のアカイア人が移り住んだといわれる。彼らは紀元前1600年頃から小王国を建て、クレタ文明の影響を受けたミュケナイ文明が栄えるようになる。クレタ文明は紀元前2000年頃に開花したが、これが崩壊した紀元前1400年頃にはすでにギリシャ人がエーゲ海に進出し、クレタ島の支配権も握っていたと考えられている。オスマン・トルコ帝国最盛期勢力図 そして、紀元前8世紀頃には、ギリシヤ人は小アジア半島の沿岸にまで定住するようになった。いうまでもなく現在のトルコの領土内にあたる地域である。 紀元前7世紀にはギリシヤの植民市が建設され、ボスポラス海峡の植民市ビュザンティウムもそのひとつたった。これこそ時代とともにコンスタンチノープル、イスタンブールと名を変えていった土地である。 小アジア半島はペルシア帝国やマケドニア王国などに攻略された後、紀元前2世紀にローマ帝国の属州となる。 ローマ帝国の支配下に入ったとはいえ、ギリシヤの文化はローマに多大な影響を与えた。330年にビュザンティウムはコンスタンチローマ帝国最盛期勢力図ノーブルと改名されてローマ帝国の首都になり、帝国が東西に分裂してからは東ローマ帝国の首都になっている。 そして、東ローマ帝国はギリシヤ化していき、ビザンチン帝国とも呼ばれるようになり、公用語はギリシヤ語となる。宗教の面でもコンスタンチノープルを中心とした東方教会(ビザンチン教会)が起こり、西ローマ帝国のカトリック教会と対立。1054年には互いの最高位の聖職者が破門しあって、完全に分裂する。 ビザンチン帝国がイスラム勢力に脅かされるようになったのは、7世紀以降のことだ。前述したようにセルジュクートルコが西へ勢力を広げ、1071年にビザンチン帝国を破つて小アジア半島を獲得。その結果、一帯ではトルコ化、イスラム化か進んだ。 そして、やがて大イスラム帝国を築き上げるオスマンートルコが、1299年に建てられる。

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